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SCOT Essays詳細

October,28,2010

見えない身体を意識化すること

 人間が生きていくには何が必要か、身体が十分にその働きをすることが大事である。身体は幼児の間は意識的に支配しなくても存在し、生存することはできる。しかし、それは他人、母親や医者などの助けを必要とする。心臓は自動的に動くが、食事は与えられなければならない。一個人として自立し生きていくためには、身体のうちで自らコントロール=意識的に支配しなければならないものがある。意識すべき重要なものは3つある。身体が生活上で目的をより良く果たすために必要なもの、身体行動にともなうエネルギーの燃焼と呼吸の調節、それと重心の支配である。エネルギー、酸素、重心、これらは目にすることはできないもので、日常生活ではことさらに意識しているものではない。しかし、このいずれかが欠乏したりコントロールに故障が生じてみれば、健全な身体生活、現代を生きる人間としての社会生活をおくるのが難しくなるのが分かるはずである。身体のうちのエネルギーの燃焼が多ければ多いほど、呼吸活動により酸素が充分に供給されればされるほど、重心が支配され身体行動が安定を保てれば保てるほど、人間の行動の範囲と多様性は高まり生命維持の安全性も増す。舞台上での演技も同じである。この3つのものが特殊に鍛錬されることによって、身体は力強く敏捷に動き、声は大きく強くなり、自分以外の存在への働きかけも高められる。要するに、他の存在へのメッセイジの発信力が高まるのである。これらへの意識性を強め鍛錬することは、演技という行為がより良く成立するための基礎的な条件でもある。
 
2007年9月 演技の考え方と基礎的な訓練の方法<鈴木トレーニングの実際>より

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