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SUZUKI's Works ⁄ 鈴木忠志構成・演出作品

8月12日 新しい経験

 一昨日、私の訓練を学ぶために、32人の演劇人が世界15の国から到着。今月の初頭からすでに、私の舞台に出演する16人のインドネシア人、7人の中国人、2人の韓国人が滞在していたから、一挙に外国人が増えた感じである。その数はSCOT劇団員の総数を越える。
 今年は日本とインドネシアの国交樹立60周年、中国との平和友好条約締結40周年にあたる。そのためばかりではないが、例年に比べてアジア人の参加者が多い。訓練参加者の中にも、アジア人が10人ほどいるし、サマー・シーズンが開幕すれば、アジア諸国からドッと観客が押し寄せてくる。そればかりではなく、来年に開催するシアター・オリンピックスの国際委員や参加団体の演出家が、ギリシャ、ロシア、中国、インド、ポーランド、イタリア、メキシコ、ドイツなどから来村するから、今年の夏の利賀村は、世界の演劇人の一大交流センターのような様相を呈するかもしれない。
 来年のサンクトペテルブルクとの共同のシアター・オリンピックス、その準備も急速に進み出した。すでに決定された25演目の日程調整に入っている。新設する宿舎や稽古場の工事も、チャクチャクと進んでいる。この施設整備は、富山県、南砺市、富山県の経済界の財政支援によるところが大きい。しかし、それにもまして有り難かったのは、創価学会が百瀬川沿いの我が家に隣接する土地9,300平方メートルを、舞台芸術振興のためにと無償で寄付してくれたことである。これによって、難航していた施設建設の土地の目安が、一挙に解決した。感謝である。
 SCOTサマー・シーズンの観劇申し込みも順調で、すでに第一週の主要な演目は満員。第二週も僅かの客席を残すばかりである。観客の皆様の応援があっての我々の活動だから、ナニヨリモ、アリガタイ! 今年で数え年80歳になったが、もう少しはガンバラナケレバ、という気持ちになる。
 今夏のSCOTの新作は一つだが、まったく新しい経験をさせてもらっていることがある。「ディオニュソス」である。この作品の初演の舞台は東京の岩波ホール、今は亡きホールの支配人高野悦子さんのプロデュースによって1978年に形になったもの。その時の題名は原作どおりの「バッコスの信女」、それを「ディオニュソス」と改訂して上演したのが1990年、水戸芸術館のオープニングの時である。いずれもSCOTの俳優だけで出来上がったものではない。主演の役者はSCOT以外の人が多かった。初期には能役者やアメリカの俳優がディオニュソスやペンテウスやアガウエを演じている。
 今回の「ディオニュソス」の舞台はそのことが更に徹底されている。出演俳優15人のうちSCOTの俳優は一人だけ、残りは外国人、しかも中国人一人を除いてはすべてインドネシアの俳優である。
 人種によって俳優を区分けすると、舞台上では3カ国語が話されると、日本人は常識的に思うのが通常だが、それがまったく違うのである。インドネシアは無数の島国が統一されて一つの国になっている。そして、それぞれの島は独自の言葉を使っている。違う島どうしの言葉で話すと、同じインドネシア人といえども話が通じないそうである。
 舞台上には6人の僧侶が登場するが、この俳優たちは、それぞれ異なった島から選抜された。むろん皆が理解できる共通語もあるようだが、インドネシア人の強い要望で、舞台上ではそれぞれの俳優が生まれ育った島の言葉、子供の頃から慣れ親しんだ言葉で会話することになった。俳優たちにとって、そのほうが言葉の意味に深い内容を付与しやすいというのである。私はこの要望を受け入れたので、めずらしいことが起こった。同じ国の人たちでありながら、出演者も通訳も誰ひとり、すべての言葉が理解できない事態になったのである。
 むろん私は、どんなインドネシア語も分かる訳ではない。なんだか違うリズム、違う音色の音が発せられているのを感じるだけである。彼らは同じ人種だから、顔立ちも身のこなし方も似通っている。それがまったく違う言葉をつぎつぎと発するのを目のあたりにするのは、今までにない経験であった。
 この舞台は利賀村での公演後、ジョグジャカルタにある世界遺産、プランバナン寺院の前に創られた野外劇場で公演する。場所も場所だが、私にとってインドネシアは初めての国だから心配することはある。しかし、俳優たちが私の演技訓練を実に良く身につけてくれたので、舞台のことでは何一つ不安はなく楽しみである。 


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