BLOG

鈴木忠志見たり・聴いたり

1月20日 戦い

 利賀村は昨年の暮れから豪雪に見舞われている。正月の五日に猛吹雪の中を脱出し、台北と東京での仕事を終えて帰ってみると、我家は二階の窓しか見えず、一階は完全に雪の中に埋まっている。毎日毎日除雪車を使って、家の周りだけはわずかな雪しか残さないようにしておいたのに、たったの二週間でこのありさま。以前と同じ状態に戻すのに二日もかかってしまった。
 雪は美しいなどとはとんでもない、水と同じように暴力でもある。自然は人間の心を癒すと言う人もいるが、自然はすべからく暴力だと思ったほうがいい。ハイチの大地震もその一端を示しているが、欧州でも中国でも今年は寒波と雪害がひどく、大勢の人たちが死んでいる。利賀村は今日から、八尾町からの道も旧井波町からの道も、雪崩の危険性のために、夜8時から朝7時までは通行止め。その間は孤立である。
 稽古初めのその日に、雪崩のために通行止めとはよくできている。昼間は自然の暴力としっかりと戦って、夜は集中した稽古をするようにということか。豪雪との戦いは危険もあり空しいが、生命の危険をたえず忘れないようにしてくれるのはありがたい。稽古があればなんとかやっていける。
 いま東京では検察と戦っている人を、鳩山総理が励まして評判らしい。私も誰かに励まされたい。存分に戦ってください、と。