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鈴木忠志見たり・聴いたり

1月25日 戦い

 玄関前の雪を溶かすために、300メートルほど離れている谷から、水をホースで引いている。一週間ほど前に夜中に水が出なくなって、朝になったら屋根の雪が落ちて玄関から出入りができなくなっていた。原因は、貂(テン)が取水しているホースの先端に首を突っ込んだから。もちろん貂は死んでいた。ホースはドラム缶の下の部分に接続してあり、ドラム缶の上部は石ころや木の葉を吸い込まないように金網がしてある。隙間から入ったのか、それにしてもこんな死に方は不思議である。
 昨日は池の中にカモシカが死んでいた。雪があまりにも高く積もり、池の上にまで張り出していたから、水面と地面の境が分からなくなって、雪もろともに落ちたのだろうか。可哀相に、水から引き上げるのに一苦労した。
 除雪車を使っていると、地形がどうなっているかの記憶がたいへん重要である。常日頃親しんできた地形も完全に見えないから、記憶をたよりに行動する以外にはない。私も今年の冬は、池の境界を見誤って除雪車を水中に落とし、工事現場で使用する油圧ショベル・カーいわゆるユンボを借りてきて引きずり出した。
 除雪車とユンボは私の大好きな二つの機械だが、対照的な集中力を要求されて面白い。除雪車は地形を元に戻すために使われる。だから、これを活躍させる場所の記憶がしっかりしていないといけない。石に当たっても、地面を引っ掻いても故障するし、川に落ちて死にかけることもある。記憶と見えない危険性を推測する力がいる。ユンボは逆で、地形を変えるために使用するので、視覚的な形態に対する最終的なイメージがしっかりしていないと、いい仕事ができない。どんな穴を掘り、どんな形に土を盛りたいのか、目の前に生えている木を押し倒すのか移植するのか、工事中に出て来た石や出水はどうするのか、すべからくイメージと判断力が行動の前提である。
 今年は自然の暴力のお陰で、いろんな新しいことに出会えている。