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鈴木忠志見たり・聴いたり

12月28日 ふるさとの山

 昨年の暮れと同じ轍を踏むまいと、飛行機ではなく新幹線と高山線を乗り継いで帰村する。26日の朝早く品川駅を発ち、我が家には夕方到着、八時間を要した。名古屋駅に到着直前、列車が止まる。岐阜羽島と米原の間が停電のため30分ほど停止するという。その理由を聞いてアキレル。樹木が架線に倒れ、それを取り除く作業にかかるとのこと。そんな所を新幹線は走っていたのか。
 しかし、30分経っても列車は動かない。再びアナウンス。木は撤去できたが、電線の点検にもう30分は停止する。雪がちょっと降ったぐらいでナサケナイ、樹木一本で一時間。 世界に誇れる新幹線、それを支える日本の技術、中国の新幹線事故をあざ笑うかのように聞かされたものだが、JRのこのテイタラクハ、ナンダ! である。これでは原発事故を起こしながら、客から更に電気料金を徴収しようとする東京電力と同じではないか、いずれは大事故を起こしても、そのために金がかかるから運賃を値上げする、と言い出すのではないかなどと妄想がヒトシキリ膨れ上がる。
 マア、シカタガナイ、高山線は一時間に一本は出ている、次の列車でノンビリイケ、列車は名古屋駅に着く。高山線のホームに駆け込むと既に列車は出発、3分遅れである。名古屋駅で侘しくソバを食べながら、また一時間。高山の駅前には、富山県と南砺市の職員が車で待機してくれている。利賀村まで送り届けてくれるためである。三時間近くも何をして待っていてくれたか、まことに有り難くもあり申し訳ない感じである。
 利賀村へは夕方の5時、激しく降る雪の中を暗くなっての到着。さすが利賀村クン、雪は一メートルほども積もっていた。嬉しくなるから不思議である。ともかくここは特別の場所であると新めて思う。
 6時からの忘年会は、今年も世話になった利賀村、南砺市、富山県の人たちと劇団員とで盛り上がる。喫茶店ボルカノの前ではドラム缶を並べて薪を焚いた。川を挟んだ向かいの山がうっすらと見える。それを眺めていたら石川啄木の短歌を思い出した。
 ふるさとの、山にむかいて言うことなし、ふるさとの山はありがたきかな。