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鈴木忠志見たり・聴いたり

7月22日 切れ端

 自分の舞台のためだけではなく、演出家コンクールに参加する人達のために岩舞台の客席、一緒に暮らしている動物たちのために遊び場を作る。経済的にすませたいから、倉庫に在った古い材木や土木工事の足場にしたパネルをかき集める。久しぶりの大工仕事、ノコギリを引くのも、カナヅチをふるうのも力のいる仕事だと、つくづくと感じる。魚を採る網を手にしてアナグマ=穴熊を追いかけ、捕まえた拍子に転倒し、脚を痛めたから尚更そう感じるのかもしれない。若い劇団員が腕をあげていて、手際よく動いてくれるので助かる。それにしても毎日毎日、材木の切れ端が多く出てくるのには驚く。
 劇団員と一緒に、切れ端は保存して置いた方が良いか、捨ててしまうのが良いのか、しばしば戸惑うことがある。切れ端の中には大きなベニヤ板もあったりする。また使う機会もあるかもしれないと、ちょっと考え込む。すぐ決断ができず、ドウスルカ? などと劇団員に聞くことがあるのも年を経った故か、貧乏性による優柔不断のせいか。時として劇団員がキッパリと言ってくれる。倉庫も手狭になったし、処分しますか! オオー、ショブン。つい最近、ウンザリするほどに聞かされ馴染ませられた言葉である。ヨシ、ショブンシヨウ、それで気持ちはフッキレルからこの言葉は便利。他人がはっきりと勧めてくれた事だから、勿体ないという気持ちにも、言い訳が立ったと思うのかもしれない。 
 処分とは物事の処理や扱いの決まりをつけることだが、我々はこの言葉を、要らなくなった物を捨てたり、廃棄や焼却することに使っている。行政処分などという言葉に表されている、権力の発動や、財産の処分をするというような大袈裟なこととは次元が違う。もう少し日常的なつつましい話し。民主党を分裂にまで追い込んだ処分とは違って、材木は党議拘束違反をした訳ではない。材木を除名したり、材木としての使用を何ヵ月か停止しても意味をなさない。我々が勝手に切り刻んだもの。
 民主党の消費税増税に反対した議員への処分は、組織の規則に違反した行為への処罰だという。しかし、選挙民との公約に違反したり、勝手な発言ばかりしている議員の集合体である人達が今更、他人の意志を拘束したり、ルール違反の行為だと称して、罰則としての処分をするとは思わなかった。だいたい、民主党がひとかどの組織であり、規則があるだなんて今更ご冗談を、という気もするのである。
 まだまだ一緒にもたれ合いながら、お互いにもっともっと勝手なことをしたり、言い争ったりして闘おうと合意すれば、私などは前向きな権力闘争のエネルギーを感じて、むしろ政治とはそういうものだと納得するのである。処分というなら、民主党員全体を一挙に、ショブンしなければおかしいのである。今までの民主党の政治を見れば、処分した方もされた方も、どちらも国民に偉そうなことを言えた義理ではないではないか。全員で公の約束違反をしたのだ。まあ材木の切れ端を処分するように、気楽にはいかないだろうが、自分たち全員が、廃棄や焼却のショブン対象になりつつある存在ではないか、という程度の疑問はもってもらいたいものである。
 だから民主党は、自民党や公明党と協議して、国会議員全員が早く身を処分する方策でも考えるべきではないか。自民党も公明党も一度は、国民に処分されかかった政党である。何を今更、国難の時代を乗り切る三党合意だ。公党の約束だ。笑わせてはいけない。そもそも最高裁判所に、あなたたちは皆、憲法に抵触する違法的な存在の仕方をしているのだと言われている人達ではないのか。
 マチガイがあったら、我が身の処分ぐらい、自らの決断で潔くやってもらいたいと思うのである。