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鈴木忠志見たり・聴いたり

4月29日 50周年

 外国人向けの演技訓練の教室を再開して3年目になる。今年はSCOT創立50周年、俳優のための演技訓練のクラスだけではなく、演劇活動から世界の現状はどう見えるか、議論をする機会も初めて設けた。それぞれの国での演劇活動の社会面での苦労、芸術上の問題点などを徹底討論するつもりである。20カ国の約40人が参加する。前者は俳優が中心だが、後者は演出家や演劇の教授、私の訓練をそれぞれの国で教えている俳優が集まる。
 昨日、応募者から今年の参加者を選んだ。実際の活動に触れたわけではなく、書類での審査だけになってしまった人も多く、ズイブンと迷ったこともあったが、トモカク最終的な結論を得てホットしている。今月末までには参加の諾否を、それぞれの人たちに連絡することになっていた。
 今年の訓練のクラスには例年に比べて、初めての国、初めての来村者が多い。ハンガリー、ベトナム、インドネシアなどである。私の方が参加してほしいと要望した若干の招待者はいるが、殆どの人たちが南米や欧米、アジアの諸国から、交通費は自腹、それに授業料と宿泊費を合わせて10万円を支払っての参加である。彼らの情熱と、この利賀村でのSCOTの活動の世界的な広がりを感じる。今年はまだ、SCOTサマー・シーズンの招待出演者の宿舎も必要なので、参加希望者のすべてを収容できず、少し残念な気持ちも残る。書類審査だけで表現者の優劣を選別し、参加を断るのも気が引けるところもある。来年からはこの現状を少し改善し、外国人を大量に受け入れられる態勢をとるつもりである。
 トルストイの有名な言葉に、コンナノがある。幸福な家族はみな似かよっているが、不幸な家族は、それぞれにみな違っている。この言葉をもじって、今アメリカで注目のヘッジファンド・マネージャーのピーター・ティールは、スタンフォード大学の講義でこんなことを言っている。企業の場合は反対で、幸福な企業はみな違っている。
 私も外国の演劇人と数多く付き合ってきた経験から、トルストイの言葉にアヤカッテ実感を述べると、優秀な演劇人は国柄によって、それぞれに違っているが、ダメな演劇人は何処の国の人もその精神は似ている。自分のダメな所にアマク心情的、目標へ執着するココロザシが低い。要するに、克己心のないナマケモノなのである。
 この世界の果てのような利賀村まで、ワザワザとやって来る演劇人に、ソンナ怠け者はいないとは思うが、今年は私の演出作品の舞台が6本もある。さらに外国からの招待公演が4本。稽古期間を入れると、7月3日から9月14日までの長丁場、その間に休みはない。少し欲張りすぎた気もしないでもないが、劇団員もハリキッテいる。ガンバルつもりである。
 最後のジブンへのケジメ、ソンナ気分でオオキク、デテミタが、観客の皆さんが喜んでくれなければ、モトモ、コモナイ。ウマク乗り切れることを願っている。